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ステルスオミクロン株の症状は強い【続報・令和4年2月14日】転載

[2022.02.14]

年末に入り込んだオミクロン株は、あっという間にワクチン未接種でコロナにナイーブな子どもたちの間で広がり、ついに高齢者にも感染が広まった。これから注意すべきは、高齢者の感染だ。好き嫌いでワクチンを選んだ結果、ブースター接種が進んでいないのは自業自得だ。インフルエンザワクチンでメーカーを指定するなんてほぼない。あるとしても、防腐剤なしのワクチンを希望することぐらいだ。その理由であれば理にかなっているが、それ以外は意味がないことと理解している。ワクチンで大事なのはスピード、つまり接種時期だ。解らない人は無暗に拒否しないことだ。ブースター接種は一刻も早く接種すべきで、選好みしている間に感染している高齢者の診察が続く。選好みするような方は、逆に予防薬を希望しない。否定するのは権利だが、重症化したり、入院したりする可能性が高い高齢者は医師の指示に従う義務があると私は思っているが間違っているのだろうか?外来をやりながら愚かな行動をする高齢者が多いことに驚く。テレビの影響も大きい。

2月上旬にピークアウトするという予測は的中した。数字のプロたちが予想したデータと、私のように毎日PCRをやっている現場の医師との考えが一致すれば概ねそのようになる。感染者数だけ取ってみると、予想通りだ。しかし、予想外のことが先週起きた。

年始から始まった草加八潮の子どもたちの感染爆発は、軒並み軽症だった。私がかかわる幼稚園、保育園は全滅した。私が嘱託医としてかかわるすべての幼稚園で休園があった。感染が見つかればまず休園して感染者の特定のため3日休園して、職員の全員検査を数回実施する。発熱者は、すぐに小児科受診させた。私自らが診断した子どもや先生方、スタッフも多い。頭痛、38度程度まで、あるいは発熱なしの咽頭炎、咽頭炎や咳にともなう嘔吐が主体であり、下痢などを伴うものもそれなりにあった。しかし、軽症というのが共通点だった。

時間が経つにつれて「ステルスオミクロン」という名前が出てきて正直戸惑った。ステルスの意味がPCR検査をすり抜けるのか、予防接種による免疫機構をすり抜けるのか定義があいまいだからだ。オミクロン株の特徴は、感染力が強く、再感染も多い、のど周辺で増殖して症状がでる、肺には入りにくいので重症化はまれだった。まれといっても、高齢者に蔓延していない状況だった時のデータの話だ。高齢者は風邪ひいただけでも重症化する。毎年インフルエンザでたくさんの死者が出ていた。高齢者に感染が広まった現在は、病床使用率、重症化病床使用率ともに上昇しており医療ひっ迫を招いている。大阪は既に危機的状況だ。ブースター接種の遅れが、高齢者を守る最大の武器であったが政府の方針が遅れて今回のような比較的重症化しにくいオミクロン株による重症化数の増加を招いた紛れもない事実だ。残念だが、ワクチン担当者は責務を果たしたとはいえず、昨年12月に河野元大臣が平等よりスピードだとコメントした時が全てであり、年末年始の休みを考慮したワクチン行政が招いた人災だ。今後批判されるべき事案だ。古いタイプのワクチンを急いで接種しているので、重症化予防効果は一定数期待できるが、オミクロン株の感染予防効果については正直期待できない。特にステルスオミクロン株にワクチンブースター接種がどれほど効果的なのかは未知の世界だ。

子どもたちに話を戻す。多くの子どもはワクチン未接種であり、コロナにはナイーブな状態だった。オミクロン株が流行って、慌てて休園、休校したが概ね子どもたちはオミクロン株に暴露して免疫を得たと考えている。(草加八潮地域の感染状況からの推察)親は大変だったかもしれないが、小児科受診せずに治ってしまうような新型コロナだったら予防接種するより自然免疫を獲得するのもよい選択だと考えていた。発熱もせず、兄や姉、親が発熱してからオミクロン株を持ち込んだのは一番下の幼児だったいう家庭をたくさん診察した。小児科の多くはコロナ対応が遅れ、投薬加療のみで検査をしない。つまり診断できていない。小児科医の本音は、コロナなどただのカゼだということだろう。確かにそうだと思っていたが、私は家族や地域社会のことを考えたら診断して隔離が大原則だと考えここまでやってきた。大人の診察をしない小児科医は、子どもが軽症ならば全く気にも留めないようで残念だ。確かに軽症のオミクロンに感染した子どもたちは、ステルスオミクロンが来ても免疫されているから概ね心配はない。小児科医の一部は、かかって免疫と考えているのはそうした根拠からだろう。そもそも小児科は入院しない、まれなので気にも留めていない。大阪の吉村知事が聞いたら激怒するだろうけど。

ステルスオミクロンは、過去の免疫をすり抜けるという意味と、オミクロン株を特定するPCR検査をすり抜けるという二つの意味があるようだ。その定義はあいまいだ。そもそもオミクロン株は、過去の新型コロナウイルス感染者も容易に感染するため再感染率が高いという評判だった。つまり、その時点でステルスだったのではないかと思う。オミクロン株の中に、BA.2と呼ばれる亜種が出てきた。BA.2は、最初のオミクロン株であるBA.1をPCR検査で検出するプライマー(PCR検査で増幅させる遺伝子の鋳型)では相補的な遺伝子配列として認識されないようだ。(私は実際にオミクロン株同定のためのPCRを行ってはいない。)ゲノム解析して全遺伝子を解析して初めてBA.2と同定できるオミクロン株が入り込んでいたということが明らかとなる。その結果として、ステルスオミクロンと呼ばれるようになったようだ。最初に来たオミクロン株BA.1に引き続きステルスオミクロンと呼ばれるBA.2が入り込み置き換わりつつあるというのが現状で、ヨーロッパの状況を再現している現象として矛盾しない結果であると推察する。

続報を掲載するには、理由がある。

1月初めから、軽症のオミクロン株をたくさん診察してきた。陽性率は7割を超えた時期もあったが、軽症のため臨床上は緊張感のない診察となっていた。感染者となった子どもも親も、こんなに軽いコロナなんてあるのかという顔をしていたのが印象的だった。家族みんなが感染するから、陽性率は自ずと高くなる。わかっていれば怖くない。

しかし、先週外来で気になる子どものコロナ感染があった。デルタ株では、兄弟全員同時コロナという事例はまれで時間差が普通だった。オミクロン株においても、家族内感染の場合の発症時期は数日ずれていた。それが2月の2週目から兄弟姉妹全員同時感染が当たり前のような状況になった。そして何より気がかりなのは、39度越えの発熱事例が複数あったのだ。正直なところ1月中は、軽症、風邪薬と解熱剤で3日寝てくださいで済んだ。しかし、40度近く発熱すると軽いとは言えない。臨床上はコロナでない感染症を疑ったが、念のため検査しましょうと抗原検査・PCR検査を勧めた。つまり、臨床症状だけでは誤診したのだ。もちろん抗原検査で陽性が出て、お母さんごめんなさい全員コロナでしたと謝罪した。更に言うと、家族の中に未だかつてないほどウイルス量が多い検体があった。PCR検査で言うところのCt値がものすごく低い、つまりウイルス量が多い事例が含まれていた。ステルスオミクロン株は、感染力も強く、症状も強いと考えを改めなければならないと気を引き締めることになった。

まだ、感染していないコロナにナイーブな子どもたちの中で強力なステルスオミクロン株が増殖され、家族から高齢者に広まりつつある。不安をあおるのは本意ではないが、最近のコロナは軽くないという事を再認識すべきだ。ピークアウトしたが、仕切り直しして、更に感染対策を強化すべきだ。高齢者や持病がある方は今すぐブースター接種すべきだ。選んで予約を先延ばしにするのは危険だ。

今からコロナに感染すると結構つらいよ、と警鐘を鳴らします。

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